分子整合栄養医学はノーベル賞を 2回受賞した天才科学者ライナス・ポーリング博士と、精神科医エイブ ラハム・ホッファーによって 1968 年にその概念が創出された学問体系です。
この医学の特徴は、「体に優しい crude(精製されていない自然なもの)な precursor(前駆体)を至適量 使用する事で薬理学的な効果を得る」というものです。
既に活性化したものを投与してコントロールする現代の薬物療法と違って、天然物を十分量使用し、あとは生体内のコントロールに任せることによって、副作用が少なく、人にあった効果が期待できます。
分子整合栄養医学やオーソモレキュラーを実践する人の中に、サプリメントを摂取することが『治療の根幹』だと勘違いしている方がいますが、そうではありません。
サプリメントはあくまでも、治療の改善スピードを加速させるための手段です。サプリメントをとること自体が『ゴール』や『目的』ではありません。
とりわけ治療目的につかう場合は、手当たり次第にサプリメントを飲んだとしても、効果を上げるのは難しいと思います。
病気の治療を念頭において分子整合栄養医学を実践する際には、『たべものから得る栄養だけでは摂取量が追いつかず、体の細胞を修復させるには間に合わない』という場合があります。そこで、『サプリメントから栄養を補いたい』という希望があったときに検査を行い、検査結果によって必要な栄養素を補います。
ですから、分子整合栄養医学やオーソモレキュラーを実践していても、必ずサプリメントを摂る必要はありません。普段の食事に気を付けるだけで、症状や体調をコントロールできるのであれば、これ以上素晴らしいことはないのです。
食事だけで済めば、経済的にも時間的にも精神的にも全く負担はありません。分子整合栄養医学の究極的な理想は『食事だけで細胞機能を最高のコンデションにすること』だといえるでしょう。
その一方で、食事だけでは、栄養を補えない人、細胞の機能を高めて自然治癒力を高めるためには推奨量の何倍も取らないといけない人もいます。
分子栄養学の基本は「個体差」と「ドーズレスポンス」です。
「個体差」とは、人によって必要な栄養素が違うこと 。「ドーズレスポンス」とは、人によって必要な栄養素の量が違うことです。
つまり、「どの栄養素を」「どの位使えばいいのか」が人によって異なるという意味です。
脂溶性ビタミンで10倍、水溶性ビタミンおよびミネラルで100倍の所要量の個体差が見られます。これは、遺伝子レベルで個人を診断し、栄養アプローチを行うことの重要性を示唆します。
生活習慣や遺伝的要素で正常に働かなくなった細胞分子を整合させるために、栄養素やサプリメントを薬同等に使用します。
まず行うのは、患者さんに自分の健康状態を正確に把握してもらうための検査です。血液検査で、ミネラル、臓器特異性、を調べます。また、体内に蓄積した重金属の量、腸内環境、ホルモンバランス等を調べます。
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しかし、その結果で、足りないと分かった栄養素をいきなりの量のサプリメントで処方することは、ほとんどありません。それよりも栄養を取っても体内で吸収されない、あるいは消化を阻害する原因を見つけることが大切なのです。
食事や生活習慣に気を使い、例えば医師から勧められたサプリを摂っているのになかなか改善されないという人の原因は、『栄養の吸収と阻害する要因』を掴めてないことがほとんどです。
例えば、日本人は腸が長いこと、胃酸の分泌が弱いこと、腸内環境の悪化などが原因で、たんぱく質、ミネラルの吸収が低下しています。
腸内環境、つまり吸収のメカニズムを整え、栄養吸収を阻害する要因を取り去ることで体調が改善し、最終的にはサプリメントが不要になることも少なくありません。