3月28日に開催された「第3回大分医科歯科連携ネットワーク」にて一般演題で、『骨粗鬆症の栄養療法 見逃されがちな栄養不足と骨粗鬆症への精神科での取り組み』というテーマで30分間の講演をさせていただきました。
1. 精神科病院における骨粗鬆症リエゾンサービスの意義
私が13年前まで約20年間整形外科で勤務する中、精神科の患者様が骨折し、整形外科に搬送されるケースを多く目にしてきました。実際に13年前から精神科病院に勤務し、入院中に転倒、骨折される方の多さに驚愕したのが、この取り組みの原点です。病棟では頻繁にカンファレンスを行い、徹底した転倒予防策を講じています。しかし、精神疾患特有の幻覚・妄想による不注意や突発的行動、認知機能低下による判断力の低下に加え、糖尿病性ニューロパチーやパーキンソン症状による歩行障害、薬剤調整による影響など、転倒リスクが非常に上昇しやすい背景があります。
さらに近年の研究では、精神疾患に伴う慢性的なストレスがHPA軸(視床下部-下垂体-副腎系)を過剰活性化させることが指摘されています。ストレス反応の持続によってコルチゾールが高値になり、交感神経系の亢進や炎症性サイトカインの増加を招くことで、骨粗鬆症が進行しやすい病態が作られます。それに抗精神病薬による高プロラクチン血症、活動性の低下、低BMI(栄養不良)、喫煙、アルコール、そしてビタミンD不足などが骨粗鬆症の原因に複雑に絡み合っているのです。
精神科患者様がひとたび骨折を起こすと、精神症状がさらに悪化することも少なくありません。特に高齢者の場合、ADL(日常生活動作)の低下から誤嚥性肺炎などを併発するリスクも高まります。だからこそ、根本にある骨粗鬆症そのものへのアプローチが不可欠であると考え、2年前より当院では「骨粗鬆症リエゾンサービス」を開始しました。現在は骨粗鬆症認定医1名、骨粗鬆症マネージャー3名に病棟師長も交え、多職種連携で活動を行っております。そのことについてもお話させていただきました。
2. 食べているのに栄養不足?「新型栄養失調」とリン酸塩のリスク
今回の講演では、もう一つの柱として「栄養」の現状、特にお腹いっぱいに食べているようで見落とされているミネラル、ビタミン不足についてお話ししました。 丈夫な骨の維持には、コラーゲンも大切ですが、カルシウムをはじめとするミネラルやビタミンD,Kが必要です。現代の食事は、カロリーは満たされていてもタンパク質やビタミン・ミネラルが圧倒的に不足する「新型栄養失調(質的栄養不全)」に陥りやすい環境にあります。
その大きな原因の一つが、加工食品に広く使われている「リン酸塩(食品添加物)」です。 例えば、安価な肉や魚の食感を柔らかくジューシーにするため、人工的に液体(砂糖、塩、化学調味料、発色剤、リン酸塩など)を注入する「インジェクション加工(保水・結着処理)」といった技術があります。これらを通じてリン酸塩を過剰に摂取すると、骨の生育に必要なカルシウムや亜鉛などの必須ミネラルの吸収が阻害され、体外へ排出されてしまうという大きなリスクがあります。
名古屋生活クラブホームページより
3. 骨を強くするための具体的アプローチ:当院が推奨する「天然だし粉」の活用
骨の健康を維持するためには、ビタミンやミネラルを「効率よく、自然な形で」摂取することが重要です。その具体的な実践方法として、当院で推奨している「出汁(だし)」の摂り方をご紹介しました。
一口に出汁と言っても、香りの良い一般的な「かつお出汁」には、期待するほどミネラルが残っていません。これは、鰹節を製造する(茹でる)段階で、大切なミネラルが茹で汁に溶け出てしまっているためです。 しっかりとミネラルを補給するためには、と乾燥させ粉末にした「煮干し粉(いりこ粉)」「あごだし粉」「昆布だし粉」などをブレンドして、丸ごと使うことをお勧めしています。
この「だし粉」を大さじ2杯ほどスープや料理に活用することで、たとえその日にミネラルが削ぎ落とされたコンビニ弁当などを食べる機会があったとしても、罪悪感なく、効率的に不足したミネラルを補うことができます。
今後とも、骨粗鬆症の啓発と食事指導を軸に、一人でも多くの患者様の骨折を防ぎ、QOL(生活の質)の維持向上に貢献していきたいと考えております。
煮干し粉、あご粉、昆布粉をミックスしただし粉でこんなにミネラルを摂取することが出来ます。